二項分布の正規近似 計算ツール
二項分布の正確な確率と正規近似の値を並べて比較できます。連続性補正やz値、np ≥ 5の目安を確認でき、近似による誤差も途中式つきで正確に表示します。
例:0.3、30%、3/10
途中式つきの解き方
この計算ツールについて
nが大きいとき、二項分布は同じ平均と標準偏差をもつ正規分布(釣り鐘型の曲線)によく似た形になります。コンピューターが普及する前は、これを利用して正規分布表から二項分布の確率を見積もっていました。現在でも、母比率のz検定の基礎になっています。
このツールは、二項分布の正確な確率と、連続性補正ありとなしの正規近似の値を並べて表示します。z値も表示し、よく使われる目安(np ≥ 5かつn(1 − p) ≥ 5)を満たしているかをチェックしたうえで、近似が正確な値からどれだけずれているかも示すので、近似を使ってよい場面がひと目でわかります。
使い方
- n、p、kを入力します。
- 事象を選びます:P(X ≤ k)、P(X < k)、P(X ≥ k)、P(X > k)、P(X = k)。
- 正確な確率、近似値、補正後の境界値とz値、誤差を確認します。
- 目安の判定バッジを確認します。目安を満たしていない場合は、正確な値を信頼してください。
公式
平均と標準偏差をそろえる
μ = n·p σ = √(n·p·(1 − p))近似に使う正規分布には、二項分布の平均と標準偏差をそのまま使います。
連続性補正
P(X ≤ k) ≈ P(Y < k + 0.5) P(X ≥ k) ≈ P(Y > k − 0.5) P(X = k) ≈ P(k − 0.5 < Y < k + 0.5)二項分布は整数の値しかとらず、各値はkを中心とする幅1の棒のようなものです。境界を0.5ずらすことで、なめらかな曲線が棒を半分で切らずに丸ごと覆うようになります。
z値
z = (x − μ) / σ そのうえで P(Y < x) = Φ(z)補正後の境界xを標準化し、標準正規分布の累積確率Φ(z)を求めます。「より大きい」事象では1 − Φ(z)を使います。
目安
n·p ≥ 5 かつ n·(1 − p) ≥ 5成功と失敗の期待回数がどちらも十分に大きく、分布が0やnの端に押し付けられていないことが必要です。より厳しく、5の代わりに10を使う教科書もあります。
計算例
例1:100回投げて表が55回以下
公平なコインを100回投げます。P(X ≤ 55)を正規近似で求め、正確な値と比べてみましょう。
- μ = 100 × 0.5 = 50、σ = √(100 × 0.5 × 0.5) = 5。目安の確認:np = 50、n(1 − p) = 50で、どちらも5以上です。
- 連続性補正:P(X ≤ 55) ≈ P(Y < 55.5)。
- z = (55.5 − 50) / 5 = 1.1なので、近似値はΦ(1.1) = 0.864334。
- 二項分布の正確な値:P(X ≤ 55) = 0.864373。
- 補正しない場合はz = (55 − 50) / 5 = 1で、Φ(1) = 0.841345となり、明らかに精度が落ちます。
答え: 連続性補正をした近似値の誤差はわずか4 × 10⁻⁵です。補正しないと、誤差は約0.023になります。
例2:目安を満たさない場合
ある工程では10%の不良品が出ます。20個を抜き取ったとき、P(X ≤ 1)はいくらでしょうか。
- μ = 20 × 0.1 = 2、σ = √(20 × 0.1 × 0.9) ≈ 1.342。目安の確認:np = 2で、5を下回っています。
- 補正後の境界は1.5で、z = (1.5 − 2) / 1.342 = -0.3727、近似値はΦ(z) = 0.354694。
- 二項分布の正確な値:P(X ≤ 1) = 0.9²⁰ + 20 × 0.1 × 0.9¹⁹ = 0.391747。
答え: 近似値の誤差は0.037(真の値の約9%)です。npが小さいと分布が偏るため、左右対称の釣り鐘型の曲線ではうまく当てはまりません。この場合は正確な値を使いましょう。
二項分布の正規近似 計算ツールを使える場面
- 二項分布の条件を満たしている:nが固定、結果が2通り、pが一定、試行が独立。
- n·pとn·(1 − p)がどちらも5以上(厳しい基準では10以上)である。
- 手計算ですばやく見積もりたい、比率のz検定の仕組みを学びたい、教科書の答えを確かめたいとき。
- ソフトウェアが使えるなら、二項分布の正確な確率のほうが常に同等以上に正確です。近似はあくまで手軽な手段であり、精度を上げるものではありません。nが大きく成功回数が多い場合でも、二項分布の計算ツールなら正確な和を直接計算できます。
使えないケース
- nが小さい場合や、pが極端な場合(0や1に近い)。nが大きくてもpが小さいときは、平均n·pのポアソン分布のほうが通常よい近似になります。
- 分布の裾の遠くにある確率(コインを100回投げたときのP(X ≥ 90)など)。絶対誤差はごく小さくても、相対誤差は非常に大きくなることがあります。
よくある間違い
- 連続性補正を忘れる、または境界を逆方向にずらす。「k以下」はk + 0.5、「k以上」はk − 0.5を使います。「k未満」は「k − 1以下」なので、k − 0.5を使います。
- z値の計算で、標準偏差√(n·p·(1 − p))を使うべきところに分散n·p·(1 − p)を使ってしまう。
- n·pやn·(1 − p)が小さいのに近似を使ってしまう。この場合、大きくずれることがあります(例2を参照)。二項分布の計算ツールなら、100,000までのどんなnでも正確な値を求められます。
- P(X = k)を補正なしで近似する。連続な曲線では1点の確率はちょうど0になるため、k − 0.5からk + 0.5までの区間を使う必要があります。
よくある質問
連続性補正とは何ですか?
連続な正規分布で離散的な分布を近似するときに、境界を0.5ずらす調整のことです。各整数kをk − 0.5からk + 0.5までの区間として扱うので、P(X ≤ k)はP(Y < k + 0.5)になります。
二項分布の正規近似はどんなときに使えますか?
n·p ≥ 5かつn·(1 − p) ≥ 5のときです(10を基準とする授業もあります)。この条件を満たせば二項分布はほぼ左右対称になり、釣り鐘型の曲線がよく当てはまります。
正規近似の精度はどのくらいですか?
n、p、事象によって変わります。公平なコインを100回投げる場合、連続性補正をすればP(X ≤ 55)の誤差は約4 × 10⁻⁵です。n = 20、p = 0.1では誤差は約0.037になります。このツールでは、入力した値に対する正確な誤差を表示します。
+ 0.5と− 0.5のどちらを使えばよいですか?
求めたい値の棒が丸ごと入るように範囲を広げます。X ≤ kまたはX > kなら境界はk + 0.5、X ≥ kまたはX < kならk − 0.5です。
正確な答えが出せるのに、なぜ近似を使うのですか?
主に手計算や試験のため、そして比率に関する多くの統計的検定がこの近似をもとに作られているためです。このページのように二項分布の正確な確率を計算できる場合は、正確な値を優先してください。